2015年6月21日日曜日

動作停止したHDDからデータを救え ~素人によるHDD修理~ 前編

ハードブレイク・ホテル

僕の記憶が全て消えても

誰もがPCやスマートフォンを使い、意識することなく大量のデータを保持している。この文章を見ている機器にも沢山のデータが存在していよう。

しかし、壊れない機械など存在しないし、電子データはちょっとした誤操作やエラーでも損なわれる可能性があることを忘れてはならない。デバイスを持っている全ての人が、大切なデータが消失する危険と隣り合わせなのだ。

ところで、女の子の「連絡先データが消えたから連絡できなかった」は大抵の場合ウソらしいので、言われた場合はデータ消失の原因を心配するより発言の理由を分析した方が良いかもしれない。

データ消失についての警告が世に溢れているにも関わらず、十分な防衛を行っている人は少ないのではないか。例えばスマートフォンのOSをアップデートした際にデータ消失を経験した人が、再発を防ぐために何らかの具体的な対策をとっているだろうか。

ちなみに私は電子データのリスクもバックアップの重要性も理解しているし、大切なデータは二重にする等の対策も欠かさない。ハードウェアの故障は避けられないとしても、完全なデータ消失とは無縁である。
バックアップ:同じデータを2つ以上の別の機器やメディア上に保存しておくこと。



そう思っていた。


オブスタークルは突然に

先日、外付けドライブの資料を取り出そうと思ったところ、当該のドライブが全く表示されないではないか。おかしいと思ってPCやドライブの再起動、USBケーブルの抜き差しを繰り返してみたが、状況は変わらない。

I-O DATA社製 HDCR-U2.0EK

何回電源を入れなおしても、中のモーターが駆動している音がしない。回転すべき中のディスクが回転していないのだ。完全に沈黙である。これではコンピューターから認識されないのも納得だ。

どうやら故障してしまったようだ。5年以上使っているはずだから、そろそろ壊れるのも無理はない。メーカーの製品ページによると2011/6/29に生産終了となっている。大したものだ。

HDDは壊れてしまったものの、データはバックアップがあるから問題はない。そもそも外付けHDDはデータのバックアップ用に用意したのだから、元になったデータは別に残っているはずである。

しかし、いくら探しても必要なデータが見つからない。Windows標準の検索機能を駆使しつつ、総当りで探してみるが、あるはずのファイルが見つからない。冷や汗が止まらない。

結局、バックアップ用と言いながら、外付けHDDのみに保存していたファイルが、覚えている範囲だけでも相当数あることがわかった。5年前からの積み重ねだから、かなりの量になりそうだ。


認めなくてはならない。

どうやら私もデータ消失に対して具体的な対策をとっていない者の一人だったようだ。


悪用の教典

なんとかデータだけでも抽出できないものかとデータ復旧業者を検索してみると何社も見つかるのだが、どこでも料金は10万円程度かかり、成功するか否かは、やってみないとわからないという。

学生時代から約5年にわたって蓄積されたデータは惜しい。特に、学生時代の写真を失うことになってしまうのは痛い。

だが、どんな写真がどの程度の量で残っているかも覚えていない。更に確実に戻ってくるわけでもないものに10万円は高すぎる。

残念だが諦めて破棄するしかない。失うとなると惜しいだけで、実際には大したデータは残っていなかったかもしれない。そう思うことにしよう。さようならデータたち。


捨てるにあたって、もし個人情報が保存されていて、悪い人が拾ってデータを取り出したりしたら大変なことになるかもしれない。念のため、二度とデータを取り出すことができないよう破壊してから捨ててしまおうと考えた。

だがちょっと待ってほしい。


……データを取り出す?


データを取り出すことが出来なくて苦しんでいるのに、データを取り出されることを心配するとは何たる皮肉だろう。

そんな心配をするのなら、自分で「悪い人」のようにデータを取り出してしまえば良いではないか。逆に、そんな方法が存在しないのであれば心配する必要もないのである。


試合終了は諦めるか否かというより時間の問題

そもそもデータ復旧業者たちは、どうやって壊れたハードディスクからデータを取り出すのだろう。壊れたHDDからデータを取り出すための何らかの方法が存在しなければおかしい。何故その発想に最初に至らなかったのか。

業者達は、
1.一般人の持っていない道具を持っている。
2.一般人の持っていない技術を持っている。
のどちらかに該当するはずである。

道具は買えばいいし、技術は持っている友人を探して頼み込めばやってくれるかもしれない。いずれにせよ10万円も必要ないのであれば希望はある。

とりあえず「HDD 修理 方法」で検索してみると、情報は続々と出てくるし、どうやら道具も方法も大して難しいものではないことが分かってきた。どうせ一度は諦めたデータであるし、ダメ元で修理することに決めた。


思い出を直す男

復活の福音

HDDの修理法について解説しているWebページ「素人でもできるHDDの修理と復旧方法」によれば、HDDはディスク部分と基板部分から成り、基板部が故障しても、故障していない基板に交換してしまえば動く可能性があるという。(図1)

図1 基板の故障と交換

ただし、ただ基板を交換しただけでは「カンカン音が鳴って、PCからはHDDが認識されない」という。理由の説明を上記Webページから引用する。
本来HDDごとに工場で設定するヘッド位置の初期値が、回路基板を交換したため入れ替わってしまったためです。

ただしこの初期値は、回路基板上の不揮発性メモリー(NVRAM、フラッシュメモリーとも呼ばれます)に残っていますので、この不揮発性メモリーを新しい回路基板に移植してやれば、カンカン音も無くなり、ヘッドも自分の位置を正常に認識できるという訳です。
なるほど、わからん。

わからんが、とりあえずの理解は以下のとおり。

基板上にある不揮発性メモリに、ディスクに関する情報が記録されていて、その情報が一致することによってHDDは正しく作動する。(図2)

図2 ディスクと不揮発性メモリの関係


基板を他のHDDのものと交換した場合、不揮発性メモリの情報がディスクの情報と一致しなくなるため、正しく動作しない。(図3)

図3 基板を交換した際のメモリとディスクの情報齟齬


基板を交換した上で、元の基板から不揮発性メモリを移植すれば、ディスクは正しく動作する可能性がある。(図4)

図4 不揮発性メモリ移植による齟齬の解消


不揮発性メモリの交換にはハンダ付けの技術が必要らしく、それが最大の難所とも言える。何しろ私はハンダ付けの経験がない。

だが調べてみると、誰にでも覚えられる技術らしいし、手先はそれなりに器用な方なので、なんとかなるはずだ。試してみる価値はある。


(後篇に続く)

0 件のコメント:

コメントを投稿