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2014年10月4日土曜日

有名企業の課題図書 ~あの会社の社員は何を読まされているのか~ 後編

丸善日本橋店の試み

有名企業の課題図書

この記事は丸善日本橋店で行われた『有名企業の課題図書』と称したフェアで紹介されていた書籍を紹介する記事の3つ目である。

まず初めに前編を読むことをおすすめする。
前編はこちら
中編はこちら

紹介された業種

扱われていた業種は以下の通りである。
  1. 製造業
  2. サービス業界
  3. 電機業界
  4. 情報通信業界
  5. 金融業界
  6. 不動産業界
  7. 食品業界
  8. 小売業
  9. 流通業界
  10. 商社
  11. 製薬業界
  12. 医療機器業界
  13. 教育機関
  14. コンサルティング
  15. 各種業界
「○○業」と「○○業界」とで表記が分かれていることに意味があるのかどうか不明だが、丸善で紹介されていた通りの名前に従うものとする。


後編(この記事)では14.コンサルティングと15.各種業界を紹介する。


14.コンサルティング

コンサルティング業界の課題図書

仮説思考

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル



BCG戦略コンセプト

価格優位戦略

学習する組織



選ばれるプロフェッショナル

リーダーを育てる会社・つぶす会社

リーダーになる



情報を読む技術

究極の鍛錬

取締役物語



忙しいビジネスマンでも続けられる毎月5万円で7000万円つくる積立て投資術


感想

『仮説思考』は、前編で紹介した『見える化』と同様、タイトルが今やビジネス用語として定着した名著である。著者の内田和成氏は時々ニュース番組などに出演しており、見たことのある人は多いかもしれない。

何らかの問題を手早く解決するには、仮説すなわち一時的な答えを設定した上で、その仮説を検証するというプロセスが最も早い。一見当たり前のように思えるが、有効に実践している人は少ないと思われる。

『仮説思考』では「良い仮説」を立てるための方法論と、それを繰り返すことで得られる先見性に徹底してフォーカスしている。実例が多く載っているので、頭の良い人は概論部分だけ読めば理解できるかもしれない。

コンサルタントを始めとした課題解決に関わる社会人はもちろん、学生にも多く読まれているようだ。私も学生時代に周囲に薦められて読んだものだった。

続編として扱われる『論点思考』は、そもそも問題は何なのか、正しい問いの設定について扱っており、併せて読むことをおすすめする。ちなみに私には『論点思考』の方が面白いと感じられた。


『ロジカル・シンキング』は通称「銀色本」「灰色本」などと呼ばれ、論理的思考法に関する書籍としては真っ先に名前の上がるベストセラーである。ビジネス書を読むなら最初に薦められる本と言っても過言ではないだろう。

著者2人が戦略コンサルティングファーム(マッキンゼー・アンド・カンパニー)勤務で得た、あるいは創りだした知見をシンプルかつコンパクトにまとめてあり、ロジカル・シンキングの標準とも言える一冊である。

ただし具体例が少なく、模範解答も無いので、なかなか難しい本でもある。私は学生の時に読んでもよくわからず、社会人になって改めて読んでみて、初めて意味や価値を理解した内容が多かった。


15.各種業界

各種業界の課題図書

※書籍リスト紛失のため省略。発見次第更新予定。

感想

(省略)

終わりに

企業にとって課題図書とは

企業が社員に課題図書を設定するとき、そこにはどんな意味があるのだろうか。

資格取得などを推奨あるいは義務付けている場合は別だが、本を読ませるというのは客観的な尺度で社員の理解度や成長を確認するのは難しいトレーニングである。それでも多くの会社が課題図書を設定する。

例えば社員同士の意思疎通に用いる共通言語の獲得を期待されているのかもしれないし、そもそも課題図書に対してどのように接するかという態度や真面目さを試されているのかもしれない。

もしくは会社が社員に対して、課題図書に書かれている内容に同意するような社員を育成していきたい、課題図書に書かれた能力を身につけた社員になってほしいというアピールをすることが目的かもしれない。

上記で紹介した書籍や、あるいは自社の課題図書を「自分が人事部や経営者だとして、この本を社員に読ませる時どんな効果を期待するだろうか」という視点で読んでみると、単に読むだけより得られるものは多くなるだろう。

(完)

2014年9月6日土曜日

有名企業の課題図書 ~あの会社の社員は何を読まされているのか~ 中編

丸善日本橋店の試み

有名企業の課題図書

この記事は丸善日本橋店で行われた『有名企業の課題図書』と称したフェアで紹介されていた書籍を紹介する記事の2つ目である。

まず初めに前編を読むことをおすすめする。前編はこちら

紹介された業種

扱われていた業種は以下の通りである。
  1. 製造業
  2. サービス業界
  3. 電機業界
  4. 情報通信業界
  5. 金融業界
  6. 不動産業界
  7. 食品業界
  8. 小売業
  9. 流通業界
  10. 商社
  11. 製薬業界
  12. 医療機器業界
  13. 教育機関
  14. コンサルティング
  15. 各種業界
「○○業」と「○○業界」とで表記が分かれていることに意味があるのかどうか不明だが、丸善で紹介されていた通りの名前に従うものとする。


中編(この記事)では5.金融業界から13.教育機関までを紹介する。


5.金融業界

金融業界の課題図書

金融マンのための実践ファイナンス講座

金融マンのための実践デリバティブ講座

金融マンのための不動産ファイナンス講座

銀行・証券・保険リテール営業で今すぐ使える税金の本


金融英語入門

あたりまえだけどなかなかできない仕事のルール

ミス激減・業績UP!チームを思い通りに動かせるダンドリ上司術

7つの危険な兆候


トヨタの片付け

2000社の赤字会社を黒字にした社長のノート

日本一を目指す物流会社のすごい社員勉強会

ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則


感想

銀行か証券会社か、はたまた保険会社か判断しかねるが、実務的なタイトルが並んでいる。新入社員よりは少し経験があり、部下もいるような年次の社員向けの書籍であることを思わせる。

『7つの危険な兆候』は企業における大きな舵取りの失敗に対し、経営者と組織がどう向き合うべきかを提示している。戦略が上手く機能しなかった場合の対策にシビアな視点でフォーカスしている名著である。

前編の4.情報通信業界で『ビジョナリー・カンパニー』を紹介したが、続編である『ビジョナリー・カンパニー2』も同じ理由でおすすめできない。先に『なぜビジネス書は間違うのか』を読むべきである。


6.不動産業界

不動産業界の課題図書

チームで最高の結果を出すマネジャーの習慣

マネジメント・テキスト 経営戦略入門

営業マンは「お願い」するな!

「時間がない」から、なんでもできる!

電話はなぜつながるのか


感想

硬派な経営戦略の教科書とライトな自己啓発本の組み合わせで、いまいち対象が想像できない。『電話はなぜつながるのか』が課題図書であるというのは、不動産業では固定電話の仕組みについて知っておく必要があるということだろうか。


7.食品業界

食品業界の課題図書

洋菓子の経営学―「神戸スウィーツ」に学ぶ地場産業育成の戦略

ディープ・チェンジ 組織変革のための自己変革

誰でもアッという間に不思議なくらい商品が売れる販売員の法則

中内功のかばん持ち


感想

販売員に関する本や、中内功のことを取り上げていることを考えると、食品を製造するだけでなく流通まで自社で行っている会社だろうか。個人的にはあまり惹かれる本がなかった。

中内功とはダイエーの創業者で、日本の流通革命と価格破壊に大きく貢献した人物である。戦後から消費者に安く商品を届けることを信念にし続け、松下幸之助とは価格に対する考え方の違いで対立し続けたという。ダイエーの経営から引退する際の「人生に楽しいことは何もなかった」という言葉が有名である。


8.小売業

小売業の課題図書

戦略読書日記 〈本質を抉りだす思考のセンス〉

安売りしない会社はどこで努力しているのか?

社長のノート3 利益を出せる人 出せない人

「先延ばし」にしない技術

手紙を極める


感想

手紙の書き方であるとか、安売りしない姿勢であるとか、高級百貨店が読ませていそうなセレクトである。

『戦略読書日記』は前編の2.サービス業で紹介した『ストーリーとしての経営戦略』と同じ著者が書いている。
内容としては企業戦略本(一部直接関係ないものもある)への書評であり、紹介されている本は『ストーリーとしての経営戦略』と関連しているため、単独で読むよりは、併せて読むと理解が深まるかもしれない。


9.流通業界

流通業界の課題図書

無印良品は、仕組みが9割 仕事はシンプルにやりなさい

コクヨ式 机まわりの「整え方」 社内で実践している「ひらめきを生む」3つのコツ


感想

いずれも流通業ではない会社に関する本である。

株式会社良品計画は2010年以降、利益率を伸ばしながら売上を34%増加させており、またコクヨ株式会社も同じ時期に利益率を劇的に改善しつつ売上を増加させている。

良品計画もコクヨも、現場の生産性改善に強くフォーカスする会社だと言われており、特に良品計画は現場の声を重視したマニュアルを売上増加の要因に挙げるほどである。

このような背景から、現場のオペレーションが重要な流通業の会社が、上の2冊に参考にすべき点があると考えるのは自然なことかもしれない。


10.商社

商社の課題図書

営業マンは「商品」を売るな!

ロジカル・プレゼンテーション


感想

営業にフォーカスした書籍だろうか。商社では担当する商品によって習得すべき知識がそれぞれ異なるはずであるから、共通化できる部分としてこの2冊が挙げられているのかもしれない。


11.製薬業界

製薬業界の課題図書

論理的な考え方が面白いほど身につく本

決算書の読み方が面白いほどわかる本


感想

一般的なハウツー本が2冊で、あまり読書による自主学習に期待していないことが伺える。


12.医療機器業界

医療機器業界の課題図書

給料が上がる人、上がらない人のたった一つの違い


感想

「こういう社員の給与は上げる、そうでなければ上げない」という姿勢を提示する極めてストレートな課題図書である。ブラックボックス化しがちな人事評価制度を、参考とは言え会社側が明らかにしているのは素晴らしいことではないか。


13.教育機関

教育機関の課題図書

「管理職」のための七つの道具術

ひと目でわかる英文契約書

グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略

プラットフォームビジネス最前線

オープン&クローズ戦略


感想

具体的な企業戦略の書籍が並び、経営や企画に関わる社員向けのセレクトであろうことがわかる。

『プラットフォームビジネス最前線』は、成功したプラットフォームビジネスを纏めて紹介しており、具体的事例から概要を掴みたい人にはおすすめできる。ただ、事例から一般化された理論や方法論の記述はあまりないため、既にプラットフォームビジネスについて詳しい人にとっては、あまり意味がないかもしれない。



(後編に続く)

2014年9月5日金曜日

有名企業の課題図書 ~あの会社の社員は何を読まされているのか~ 前編

丸善日本橋店の試み

有名企業の課題図書

丸善の日本橋店2階で、『有名企業の課題図書』と称したフェアが開催されていた。業種ごとに課題図書としている書籍が並べられているだけの展示だが、他社の社員教育の一端に触れることができ、非常に興味深い。

このフェアは丸善日本橋店で2014年8月31日まで開催されていた。

調査方法は明らかではないし、社名は伏せてあるばかりか、業種の設定区分も想像する他ないが、何らかの実際の会社(丸善曰く「有名企業」)の課題図書であったことは事実だろう。

思わず書名をメモしてしまったので、公開したいと思う。興味を持った方は是非、(フェアは終わっているが)丸善日本橋店へ足を運んでみてほしい。

なお、書籍の数が多いため、3分割して投稿する予定である。

紹介された業種

扱われていた業種は以下の通りである。
  1. 製造業
  2. サービス業界
  3. 電機業界
  4. 情報通信業界
  5. 金融業界
  6. 不動産業界
  7. 食品業界
  8. 小売業
  9. 流通業界
  10. 商社
  11. 製薬業界
  12. 医療機器業界
  13. 教育機関
  14. コンサルティング
  15. 各種業界
「○○業」と「○○業界」とで表記が分かれていることに意味があるのかどうか不明だが、丸善で紹介されていた通りの名前に従うものとする。


前編(この記事)では1.製造業から4.情報通信業界までを紹介する。


1.製造業

製造業の課題図書

見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み

現場力を鍛える-「強い現場」をつくる7つの条件



2052 今後40年のグローバル予測

ディズニーの現場力

勝つ組織




最新版〈入門の入門〉経営のしくみ

成功と失敗の事例に学ぶ 戦略ケースの教科書

知識創造企業



誰でもすぐにできる 売上が上がるキャッチコピーの作り方

プロフェッショナル電話力 話し方・聞き方講座

凡人が最強営業マンに変わる魔法のセールストーク



感想

製造業と書くだけでは領域が広すぎる気がするが、「電機業界」「食品業界」が区別されているため、対象は素材や部品メーカーやプラントメーカーなどだろうか?

『見える化』は世に出てから10年が経とうというしているにも関わらず、未だにビジネスマン必携の書として名が挙がり続ける遠藤功の傑作である。
「見える化」という語は今や自然に使われる語になり、この書のことを意識せずに使われることも多くなってきた。この書の影響力が伺える。
課題図書に設定されるまでもなく、上司や先輩などに薦められて手にする人も多い本ではないか。『現場力を鍛える』『ねばちっこい経営』と併せて読むことをおすすめする。

課題図書の調査対象が何社あったのかは分からないが、いずれも新入社員向けの課題図書なのではないかと思われる。だが、それが正しいとすると、製造業の会社が新入社員に対して経営そのものに関する書籍を3冊も読ませるというのは少し意外である。
今やどんな会社でも社員に経営的視点を要求しているということだろうか。コンサルティング会社には様々な企業から「社内の選抜メンバー向けのマネジメントや戦略に関する講座」の依頼が舞い込んでくるが、この課題図書もそうした活動の一貫だということか。

『戦略ケースの教科書』は、新人コンサルタントの中でよく話題に上がる書籍である。所謂フレームワークに強引に結びつけている感は否めないが、戦略の変遷や数字の変化などを細かく調べてあり、課題と効果に対する目の付け所を教えてくれる。


2.サービス業

サービス業の課題図書

究極のセールスレター

究極のマーケティングプラン

ある広告人の告白

「売る」広告



アメーバ経営

ストーリーとしての競争戦略

イノベーションの本質

ロジカル・セリング



NLPのことがよくわかり使える本

さあ、才能に目覚めよう

目標を「達成する人」と「達成しない人」の習慣

新幹線 お掃除の天使たち



感想

これもまた「サービス業」では領域が広すぎて全く会社の想像が付かない。

広告関連の書籍が目立ち、またセールス系の書籍が複数あったり、カウンセリングに使われるNLP(神経言語プログラミング)の書籍もあったり、営業色の強いセレクトであることは疑いがない。

この中で読んだことがあるのは『ストーリーとしての競争戦略』のみだった。競合他社との戦い方に興味はあるが、戦略というものが何なのか全く分からないという人に薦められる、比較的ライトな読み物系の戦略本である。


3.電機業界

電機業界の課題図書

役員の法律知識がよくわかる!取締役になったら「初めに」読む本

中期経営計画の立て方・使い方

プロジェクトコスト見積もり入門



感想

見るからに管理職や役員になった人向けのセレクトである。残念ながら私は取締役ではないし、プロジェクトコストの見積もりは手伝ったことがある程度、中経の設定など関わったこともなく、何より上のいずれも読んでいないのでコメントは差し控える。


4.情報通信業界

情報通信業界の課題図書

PDCAが面白いほどできる本

一日も早く起業したい人が「やっておくべきこと・知っておくべきこと」

残業ゼロ!仕事が3倍速くなるダンドリ仕事術

絶妙な「報・連・相」の技術



自分の小さな「箱」から脱出する方法

僕が電通を辞める日に絶対伝えたかった79の仕事の話

月曜日の朝からやる気になる働き方

社員を大切にする会社 ―― 5万人と歩んだ企業変革のストーリー



給与計算の事務がしっかりできる本

「情報管理」に強くなる法務戦略

電力と震災 東北「復興」電力物語

ビジョナリー・カンパニー



感想

仕事術、仕事との向き合い方などの本が並び、また比較的ライトなものが多いことから、新入社員向けのセレクトであることが伺える。

『電力と震災 東北「復興」電力物語』が若干浮いているように見えるが、通信業界といえばSoftBankやKDDIが電力市場に参入しているので、自社の新規事業に目を向けさせるための選択ではないかと推測される。

『ビジョナリー・カンパニー』は、おすすめできない。取り扱う内容が意図的に限定されている上、楽観的すぎる。もし気になるのであれば、まず『なぜビジネス書は間違うのか』を読むことを強く薦めたい。



(中編に続く)

2013年11月19日火曜日

お・も・て・な・しの本質と実現可能性

長い前置き

ANAの機内で流れる曲

先月まで出張で毎週のように飛行機を利用していた。航空会社に特に拘りは無いが、マイルを溜め易いという理由で全日空(ANA)を選択することがほとんどだ。
ふと気になって、ANAの機内で乗降時に流れている曲を調べてみた。どうやら葉加瀬太郎作曲の『Another Sky』という曲らしい。憂鬱な(?)月曜の朝の象徴のような曲だったが、改めて聴いてみると結構かっこいい。




ANAの高品位なサービス

曲を聴いていて、出張でANAの便に乗っていた時に、そのサービスが良いことに感動したのを思い出した。
学生時代は金銭的な都合でANAは使えなかった。国内なら新幹線どころか、夜行バスがほとんどだったし、国外に行く場合も格安航空券しか選択肢はなかった。
そんなわけでANAの便には仕事で初めて乗ったのだが、そのサービスのクオリティに驚き、学生時代に高すぎると感じていた価格にも、何となく納得していた。出張で払ってるのは自分のお金じゃないけど。


どんな“サービス”に感動したのか?

しかし、どんなサービスが良かったのかと説明しようとしても、具体的な事例が思いつかない。
トラブルに見舞われた時に客室乗務員が機転を利かせて助けてくれたというようなハートフルストーリーは一つもない。強いて言えば機内で朝食をガツガツ食べていた時に客室乗務員がおしぼりを渡してくれたことくらいか…。

とにかく、特殊なことがあったわけではなく、ただ予定通り搭乗して、予定通り到着して降りる、それだけだった。もちろん、それこそが航空会社が提供すべき「サービス」そのものだと言えばその通りなのだが、学生時代に利用していたような航空会社で遅延や欠航に見舞われたことは一度もない。つまり何かクオリティの差を感じる要因があったはずなのだが、それが見つけられないのである。


好印象≒良サービスという説

話が変わるが、先日、寒くなってきたのでヒートテックを買いに行った際、ユニクロの店員の対応の丁寧さに大変好感をもった。
レジに並んで会計を済ませるという、たったそれだけの接触で、「サービスの良い店だ」と思わされていた。やはり特殊な出来事なしに、当然の業務だけで、その店の“サービス”を高く評価していたことになる(銀座店だったので接客の質に特に気を遣っているという可能性はある)。

ANAの話に戻すと、乗降であるとか、ドリンクサーブであるとか、そういったちょっとした接触の機会における対応の端々への気遣いこそが、ANAへの高い評価の要因ではないかと推定できる。


大勢の消費者たちの一度きりの機会

ANAとユニクロでは業態も提供しているものも全く違うが、窓口になる社員と、大量の消費者が接触するという点が共通している。客室乗務員は一度のフライトで数百人を担当することになるだろうし、ユニクロ銀座店のレジ担当者は一日に数千人を相手にするだろう。社員にしてみれば、それらは全て名前の無い「消費者」でしかない。
だが消費者側にしてみれば、その会社の担当者と接触するのは通常一回きりだ。その一回を、流れ作業の一部ではなく、自分の為に行われた業務であると感じることこそが、いわゆる“高品位なサービス”の本質なのではないかと考えられる。

「一期一会」という言葉がある。相手と会うのは最初で最後の機会かもしれないから、最大限丁重に扱えという茶事の心得であるが、現代のあらゆる企業に対し、この言葉が示唆することは非常に重要だ。


消費者を“一個人”として扱うという承認

ここでは、消費者が相手から一個人として扱われたか否か、すなわち個人として承認されたか否かを評価の基準にしている。
ANAにしろユニクロにしろ、用いている言葉に違いはあるだろうが、接触の瞬間にお客さまを個人として承認することを目標に訓練を積んでいることは間違いなく、その成果として、消費者はその企業を「サービスが良い」として称賛するのである。


お・も・て・な・しの本質と実現可能性

本論はここからなのだが、2020年のオリンピック招致に際し、滝川クリステル氏が、東京でオリンピック開催した際には、東京は「おもてなし」の精神で選手や観客を迎えるとスピーチした。もてなす精神とはまさしく、迎える相手を集合の一部ではなく一個人として認めることに他ならない。

「もてなす」という言葉に完全に対応する英語表現が無いからこそ、彼女は敢えて日本語の単語を使用した。だが、「もてなす」という言葉の存在が、日本人が「もてなす」ことができる証明にはならないという点は注意する必要がある。

オリンピックには大勢の外国人が日本を訪れるだろう。その時、果たして日本人は、彼らを「たくさん来た外人さん」ではなく、それぞれ一個人として承認する――もてなす――ことができるだろうか?

非難しているわけではないが、「Omotenashi」という語を世界に発信してしまった事実は重い。
前述のANAやユニクロは、普段から大勢の外国人を相手にしているし、普段通りの質で業務を遂行すれば特に問題は無かろうが、2020年には、東京(だけでなく日本中かもしれない)の全てのサービスに「おもてなし」が期待されることは間違いない。

日本に「もてなす」という語があることを誇るのは良いが、その語の意味するところを考え、実践できなくては、世界からHe cries wine, and sells vinegar.(羊頭狗肉)と言われてもおかしくない。


2013年11月16日土曜日

「ダサい」を「ください」にする技術

リゾットになるパスタ

スープパスタとは

金沢に出張していた時、駅ビルでスープパスタなるものの店を見つけ、昼食をとるために入ってみた。

公式サイトを見つけたのでリンクを貼っておく。
ルウとパスタ ぶどうの木

スープパスタというのは、麺が浸るほどスープの多いパスタを指すらしい。イタリアンのメニューとして珍しいわけではないが、スープパスタ専門店はあまり無いとのこと。


スープ七変化

メニューには様々な種類のスープパスタが並んでいて、確かに普通の(スープの少ない)パスタは見当たらない。とりあえず下のパスタを注文した。


エビとホタテが入っていたメニューで、名前は忘れてしまった。
こだわりの生麺らしく、流石の美味しさだった。

注文の際に店員から「プラス200円で、スープをスープリゾットにできるチーズライスが付いてくる」という話を聞かされたので、よくわからなかったがとりあえず一緒に注文してみた。

すると、粉チーズのかかったライスが出てきた。なるほど確かにチーズライスだ。


チーズライスとしか言い様がない。

パスタを食べ終わった後の、余ったスープにこれを投入すると、リゾット風のものができあがる。これをスープリゾットと呼ぶわけだ。


ラーメン屋の小ライスとスープリゾット

このチーズライスは、ラーメン屋で出る「小ライス」に相当するものだと気付いた。 

ラーメンのスープに浸した白飯は非常に美味しいが、どうにも食べ方として下品だ。

パスタのスープだって、そういう食べ方があっても良いはずだが、オシャレではない。 
オシャレな店舗でオシャレでない食べ方をするなど言語道断である。

ところがそれを、スープリゾットと呼ぶとどうだろう。
なんともファッショナブルな文化的料理という気がしてくるではないか。


「ダサい」を「ください」にする技術

このように、「望ましい、あるいは合理的ではあるが、世間体が悪くて出来ない」ことに名前をつけ、その行為を社会的に承認してやるという手法は実に面白い。

例えば、冬にワイシャツの下に肌着を着るのは、暖かいが、なんとなくカッコ悪いことだった。

しかし、ユニクロの「ヒートテック」は、その「ダサい」行為を社会的に承認させたのである。

ヒートテックは爆発的なヒットとなり、今や冬場にヒートテック(あるいは他の機能性肌着)を着ない人は居ないほとではないか。

人が「本当はしたいけどダサくてできない」と思っている行為には、爆発力のある市場となる可能性がある。なにしろ本当は皆ほしかったのだから、消費意欲は極めて強いのは言うまでもない。

スープリゾットの存在がスープパスタの店の売り上げを大幅に伸ばすかどうかは微妙なところではあるが…。